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練吉はさつきから一人で喋つていた。
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
小谷が対岸から流れを指しながら叫んでいた。房一の竿の前を渡渉とせふするので承諾を求めたのだ。
徳次は指で真似をした。
と、小谷はひとり言にしては大きい声で云つた。が、代りがないので又水の中へ放つた。
富田は房一に声をかけて彼のために席を明けながら、つづけて
さつきから、日のあたる縁側近くに縫物を持ち出していた盛子は、あんまりびつくりしたのと身体が重いのとで、立上ることを忘れてかう感嘆詞を連発しながら、あの語尾の跳ね上りを少し響かせながら、庭先に現れた人影に向つて目を瞠みはつていた。
ところが、徳次はぽかんとした表情を浮かべたきりだつた。
「昨日、君とこの奥さんがバスに乗るところを見かけたが、――」
「うん、今帰るところだ」
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
「はあ、どうも」
「あいつらと来たら、すぐこれ!だからね」